2025.03.27 知る

TUAD OB/G Baton≪mini≫彫刻家・佐野美里


2025年3月に発行した校友会通信50号。
『50』という節目としてメインビジュアル作品を工芸コース卒業生の彫刻家・佐野美里(さの・みさと)さん、その撮影をコミュニティデザイン学科卒業生のフォトグラファー・布施果歩(ふせ・かほ)さんにご協力いただきました。

『TUAD OB/G Baton≪mini≫』として、お二人に在学中のことからこれからの活動についてお話を伺いました。

佐野美里(さの・みさと)さんは大学院芸術工学研究科専攻彫刻領域を修了され、現在は宮城県を拠点に作家活動をされています。

学校説明会で芸工大職員にすすめられたのがきかっけです

彫刻をはじめたきかっけを教えてください

子どもの頃から絵を描くことと粘土やダンボールで何かを作ることが好きで、見様見真似で手を動かしていました。上手に作るよりも楽しんで作っていると、少しずつ周囲に「いいね」と言ってもらえるようなっていき、自信が持てるようになっていきました。自分の作品を人に褒められたり、喜んでもらえたりした経験から、高校生の頃には自然と「大学では美術を学んでみたい」と思うようになりました。そこで、学校説明会にて芸工大職員の方に相談したところ「彫刻を学ぶと、絵も上手になるし立体も作ることができる」とアドバイスをいただき、初めて彫刻に興味を持ちました。実際にオープンキャンパスにも足を運び、自然豊かで気持ちの良い校舎と、優しく面倒見の良い先輩と先生方の雰囲気が自分の性格と合っていると思い、彫刻コースを受験したのがきっかけです。

学生時代の楽しかったこと・印象深い思い出を教えてください

スタイリッシュでおしゃれなデザイン学科や他の美術科の学生の中で、頭に手拭いを巻き木屑や粘土、鉄・石の粉など、ありとあらゆるほこりにまみれた作業着で過ごした共通演習の教室や学食でのランチタイムは非日常で楽しかったです。ワイルドな身なりで安全靴をカツカツしながら歩くことは、これまでの自分の人生には無い引き出しだったので、彫刻コースのみんなとその体験できたのは楽しかった思い出のひとつです。 大学院生になってからは学科の垣根を越えた授業が増え、より一層交友関係が広がりました。(お酒の美味しさを知ったのもこの頃です笑)この時にできた繋がりのおかげで、今でもお互いに連絡を取り合い専門的な知識を交換し合うことがあります。国内外、様々な場所で活躍している友人たちと自分の展示会で再会できることも多く、とても励みになっています!

突然のメインビジュアル依頼に対し、二つ返事で快諾いただいたこと、改めてありがとうございます。今回の依頼を受けての率直な感想をお聞かせください。

校友会通信50号という特別な機会にお声がけをいただいたこととても光栄です。私は芸工大には大学院を含めて6年間お世話になりました。彫刻を中心に多くのことを学び経験し、刺激的で充実した日々があったからこそ、制作を続けるためのコアの部分を鍛えることができたと思います。現在は宮城県松島町のアトリエを拠点に、作家活動を行なっています。この号をきっかけに、作品を知ってもらえるとうれしいです。

The Beatlsのドキュメンタリーに共感してその叫びを表現しました

メインビジュアルに起用した作品について教えてください。

作品タイトルは「I’ve Got a Feeling」といいます。日本語にすると「そんな気がする」で、感じたままの感情を大声で叫ぶイメージです。 このタイトルはThe Beatles の曲名から引用しています。今年、彼らのドキュメンタリーを見た際に、誰もが知っている名曲の数々を0から生み出している様子にとても感動しました。できた曲が気に入らず、何度もリテイクをして場の空気が悪くなることが多々あるのですが、現場にいる人たちが皆、お互いに信頼し合っていて「最高な作品を作る!」と目的を一つに、苦しくてもユーモアを持って音楽制作をしている姿に胸を打たれ、とても共感したのを覚えています。私が思う「最高な作品」を生み出すことは、まずは私自身の実力が要で。その後、多くの人たちのサポートによって、やっと誰かに見てもらうことができます。(インターネットの発達により、私の作品は地球の裏側の人にも画面越しに見てもらえる世の中になっていて、これは本当にすごいことだと思います。)例えば展示会をするとき、私は周囲の人たちと様々なアイデアを出し合い、より楽しくてワクワクする方を選んで実行していますが、そういう時に「I’ve Got a Feeling!」と叫び、真面目で面白くてタフな私自身をモデルに彫刻で表現しました。

佐野さんの作品はどの子も表情豊かでとてもユーモラスですが、芯となるものを持ちつつどこか緩んでいる印象があります。制作する際に佐野さん自身が芯としていること、大切にしていることは何かありますか?

菅野さんが作品から汲み取ってくれた「ユーモラスで芯となるものを持ちつつどこか緩んでいる感じ」は、まさに理想の自分像です。作品は全部自刻像であり、憧れの対象である人物像でもあるのでとても嬉しいです。制作する時に芯としていることは、、、(とても難しい質問です!)
制作をしている時は、誰に遠慮することなく、自分のためだけに自由に楽しく真剣に制作と向き合っていることだと思います。
そうして、自分でも驚くくらい「最高だ!」と思える作品が出来上がった時に、それを誰かも同じように感じてくれると、幸せな気持ちになります。
「制作時に芯にしていること」は、実は考えたことがなく、、。 菅野さんに作品から「芯」を感じてもらえて嬉しいです!

これから挑戦したいことはありますか?

私は作品を通して人とコミュニケーションをとることがとても好きです。育ってきた環境や文化、言葉が違っていても、作品を見た時に「良いな」と思ってもらえる瞬間は毎回とても感動します。これから挑戦してみたいことは、まだ行ったことのない国で展示会をして、その土地で生まれ育った人たちに私の作品を見てもらうことです。言語を超えてお互いに感情を交換できたらとても幸せです。

TOP画像:Maki Indo

佐野美里

[彫刻家]
私の作品は全てが自刻像(ポートレート)です。その時々の自分を犬の姿で表現しています。私は自分の考えや内面性を改造度高く具現化する方法として犬の姿を借りることが最も適しているうぃ考えます。様々な自分自身を形にすることは嘘偽りなく自分自身と対話することです。私は私自身と向き合う際に、犬のように情熱的で自由で愛情深くありたいと考えています。私の作品は、私を見つめる私自身でもあります。傍にいたり、離れていたりしながら、私を見守っている存在を作り続けているのかもしれません。(Misato Sanoウェブサイトより)

佐野美里|ウェブサイト
佐野美里|Instagram