防災観光ふろしきプロジェクト

NEW 9期生 2021.10.05

大鋸幸絵

(OGA DESIGN FARM主宰/NPO法人燃えない壊れないまち・すみだ支援隊)

校友会に寄せていただいた情報の中から、「詳しくお話聞きたいな」という人をPick upし、『TUAD OB/G Baton≪mini≫』としてお届けいたします。

今回ご紹介するのはプロダクトデザイン学科卒業生の大鋸幸絵(おおが・さちえ)さんです。担当教員は黄ロビン先生でした。

大鋸さんは大学卒業後、東京都墨田区にある水泳介護用品メーカーに10年間勤務し、退職。在職中から東北の復興支援を始めたことでできた仲間に誘われてNPO法人燃えない壊れないまち・すみだ支援隊として、防災ものづくりと、防災コミュニティづくりに携わってこられました。並行してフリーランスデザイナーとしてのお仕事もこなされ、二足のわらじで活動されています。
今回は大鋸さんがディレクターとして関わり制作している「防災観光ふろきしプロジェクト」についてお話を伺いました。

きっかけは東日本大震災後
気仙沼で見た風景でした

2011年3月11日の東日本大震災後、縁あって宮城県の被災地を自分の目で見る機会がありました。特に印象深かったのが気仙沼地区です。辺りを見ても海は見えない地域なのに、道が1本違うだけなのに基礎しか残っていない家と被災しているけれども建物もしっかり残っている家と、何かが明暗を分けているようで、なぜこんな内陸でも被害が大きいのか不思議に思いました。後にこの現象の理由が川に近い場所であることで、津波が川を遡上したため起きた河川津波の被害であることを知りました。

自宅に帰ってくると、当時自分の住んでいた墨田区両国地域も隅田川と荒川、竪川など大小の河川に挟まれている街だということにとても不安を感じました。ですが歴史ある街並みや文化、この街の人が好きだったので、住み慣れた街を離れるという選択肢は浮かびませんでした。

結婚を機に他県へ引っ越しはしましたが、大学卒業以来ずっと住んでいた第二の故郷でもある墨田のために、何か起きてからの復興支援ではなく、何か起きる前の「防災」をテーマにしたものづくりや、イベントを企画しようを活動を始めました。

自立と持続を目指し、
小さくても地域ビジネスになるように

2016年から現在まで、芝浦工業大学の学生ボランティアグループ「すみだ’巣’づくりプロジェクト」の学生と一緒に「防災観光ふろしきプロジェクト」を推進し、私はディレクションに関わっています。

このふろしきは、主に墨田区の地震・火災時の避難場所という「防災」に関する情報を掲載しながら、普段から目にしていただくために、桜の名所や花火大会の会場、小さな博物館や銭湯、スカイツリーや国技館などランドマークも取り入れた「絵地図」のデザインが特徴です。
どんな情報をどう伝えるかなど、書籍編集のプロや、防災の専門家の意見も取り入れ、地元のクリエーターにグラフィックデザインを依頼しました。
前職の経験を活かし、競泳水着にも採用されている特殊なはっ水加工を取り入れ、水が運べる、絞るとシャワーになるなど機能を取り入れるなど商品企画も行いました。

「防災」と聞くと、国や自治体がやってくれるものとイメージする方が多いと思いますが、このプロジェクトはNPO法人と芝浦工業大学の学生が中心となり取り組んでいるものです。ですので墨田区に関わる団体や企業などに協賛を募り、ふろしきへ協力していただいた団体や企業のロゴを入れるなど、地域の共助の取組みを「見える化」しました。

2018年から今年の9月末まで、トヨタ財団のそだてる助成を受託し、事業リーダーとして墨田区の防災を支えるネットワークの自立、持続を目指し、小さくても地域ビジネスになるようマネジメントをしています。

また、一緒に活動する学生もメンバーが入れ替わることもあるので、毎週オンラインで会議を行い、企画の進捗をしっかり共有することで途切れることがないようにしています。また外部講師に講座やアドバイスを依頼して、関わった学生にとってもスキル向上になるような機会をつくっています。

自分のまちを自分で守れるように

私たちはこのふろしきを使って、墨田区の小中学校向けに墨田の魅力を知ってもらうことに合わせて「防災教育」を実施することを目標にしています。

苦労して制作したふろしきですが、街は毎日変化していくため「情報が変わりやすい」というご指摘も受けています。その声を活かし、自分が小学校や中学校の頃の街並みも忘れないでいてほしいという想いも込めて、卒業式などの記念品などになるような提案も現在検討中です。

墨田区の事例をなんとか成功させて、同じように災害レベルが高い地域にも応用できたらという目標もあります。
国に頼らず自分のまちを自分で守るような商品やサービスの開発で、新しい市場をつくること、交流をすることで支え合える取り組みもできたらいいなと考えています。

10年間、繊維製品に関わってきた知識を活かし、自分が当たり前に感じる問題や課題を布のように柔らかい発想で解決できる商品企画や、2.5次元の立体でもない平面でもないプロダクトデザインに取り組めたらと思っています。
いつどこで起こるかわからない地震や水害などの災害に「備えない」フェーズゼロの商品を増やしたいと思っています。

自分なりの「モノサシ」を

「100万円をあげるから、大学(進学)をやめない?」

高校までずっと勉強のモチベーションの低かった私へ、大学の合格通知を前に母の口から出た厳しい一言。そして自分の給与明細を見せながら、暗算ができない私に電卓を握らせ、4年間かかる学費を計算させてきた父。
親の心、子知らずとは言ったもので、在学中も真面目な生徒ではありませんでした。
それでも、モノのなりたちや仕組み、産業や素材について、デザインする意味など、はじめて自発的に「勉強」することを実感できた大学の授業。
課題に取り組んでいても、傍から見ると遊んでいるようにしか見えない場面もしばしばありましたが、ちょっと変わった友人たちと、かなり変わった講師陣との出会いで、自分なりの「モノサシ」を得て社会に出ることができたのは芸工大だったからこそだと思います。

みなさんはお元気ですか?
(元気って言えない状況にあるかもだけど、そこそこだったらいいな!)

私はおかげさまで、どうにかこうにか、マイペースに生きています。

OGA DESIGN FARM

Email : ogadesignfarm@gmail.com

NPO法人 燃えない壊れないまち・すみだ支援隊

「防災観光ふろしきプロジェクト」クラウドファンディング

TUAD OB/G Batonについて

東北芸術工科大学は1992年に開学し、卒業生は1万人を超えました。
リレーインタビュー「TUAD OB/G Baton」(ティーユーエーディ・オービー・オージー・バトン/TUADは東北芸術工科大学の英語表記の略称)はアートやデザインを学んだ卒業生たちが歩んできた日々と、「今」を、インタビューと年表でご紹介していきます。