TUAD OB/G BATON
世界観を作るために、厳選した「必要」をつなぎ築くこと
渡辺沙百理
(PLANNING LABORATORY主宰)
第3回目はbicco tacco主宰・伊藤玲子さんからのバトンをPLANNING LABORATORY主宰・渡辺沙百理さんにつなぎます。
[伊藤玲子さんからメッセージ]
人と人をつなぐのがとても上手で、企画力もある”さゆっぺ”を紹介します。
”ダメな学生”(自称)でした。(笑)
第3回目は、「PLANNING LABORATORY」(ぷらんにんぐ・らぼらとりー)を主宰し、イベント企画などを行っている渡辺沙百理(わたなべ・さゆり)さんです。デザイン工学部生産デザイン学科(現・プロダクトデザイン学科)に1999年に入学。ゼミ担当教員は鈴木敏彦(すずき・としひこ)先生でした。
学生時代の思い出を教えてください。
人に恵まれ、とにかくゆかいな仲間たちと遊びました。
当時は授業で作った模型が“悪い例”として紹介されたり…ダメな学生だったと思います(笑)今となってはもう少し勉強しておけば良かったです。きっと今授業を受けたら学生の頃よりももっと面白いだろうとも思います。
学生時代の経験が今につながっていると感じることはありますか?
山形という自然いっぱいの環境で過ごして育まれた五感は今の自分に生きています。当時結んだ人とのつながりは、卒業後の今も多方にどんどんと広がっています。
PLANNING LABORATORYを立ち上げるきっかけを教えてください。
大学を卒業して13年間、インテリアや雑貨の販売・仕入れからコーディネートまで一通り経験しました。ずっと続けていくと思っていた仕事でしたが自分でも驚くほど突然に「退職」という選択をし、その後の様々なご縁から体験した「ヒト・モノ・コトをつなぐ場づくり」に興味を持ったことが始まりです。それは私自身にも“わくわく”をもたらしてくれるものでした。
予想外だった「退職」という選択をした理由を詳しく伺えますか?
まず、「東日本大震災」を経験したことが大きいです。震災から2年後の石巻の新店舗に店長として異動となり、まだ元の姿とは言い難い景色や、そこに暮らす人、復興への活動を続ける人に触れたことは大きなきっかけとなしました。世の中が刻々と変化する中、私は同じ環境に13年間いたのですが、この先の5年後、10年後を思い描いた時に「もっと別の世界も知りたい」と漠然と考えるうちに唐突に「一度白紙に戻す」という気持ちが芽生え、「退職」という決断に辿り着いた感じです。
フリーのイベントプランナーとなって一番記憶に残っていることはありますか?
個人事業主として開業して今年で3年目で、これまで店舗や地域の活性化などを目的に様々なイベントを開催してきましたが、現在企画・運営している「量り売りマルシェ」に一番思い入れがあります。
この企画は「食品ロス」「ゴミ削減」をテーマに、参加者が容器持参で「必要なものを必要なだけ」購入することでムダをなくす仕組みを提案しています。「あるものを買う」のではなく、参加者が自ら考え責任をもって判断する力を備えてもらうことを裏テーマとしています。
”楽しい”や”閃き”を見落とさず、柔軟に
活動を続けていく中で大切にしていることはどのようなことですか?
テーマ・コンセプト・目的を明確にしたうえで企画作りを行うことです。
そして企画で設定した世界観を作るために必要なヒト・モノ・コトとの関係を築いていくことです。
普段の生活で楽しみにしていること、興味のあることはありますか?
毎日の生活で出た生ごみでたい肥を作るコンポストの様子を確認することや、出来上がった土で野菜を育てるなど何気ないことが楽しみです。どうしたら自然に寄り添いながら楽しんで暮らせるかが一番の関心事です。菌や微生物の動き、発酵など、本当に奥深くて興味津々です。
ここで、今回ご紹介いただいた伊藤玲子さんからの質問です。「企画のアイデアに詰まったときにどう過ごしていますか?」
一旦頭の中を整理します。そうすると目的や課題は意外とシンプルだったりするので、それが見えたらとことん向き合います。それでもダメなときは一回考えるのを2、3日やめてみる。本屋に行ったり、暮らしの中でヒントを探しているうちに「これだ!」と閃きが降りてきます。
イベントプランナーという仕事柄、このコロナ禍ではこれまでの活動通りとはいかなかったと思います。どのような気持ちで、この事態に向き合いましたか?また今後についてどのようなビジョンを持っていますか?
コロナ禍で人が集まる場を気軽に作ることができなくなり、はじめは悩みましたが、今できることをとにかくやってみよう!と割とすぐに頭を切り替えることができました。
毎月開催していた「量り売りマルシェ」も「おまかせ便」として、完全予約制にしたことで食品ロスが出ない形をとりスタートさせています。
またマルシェ再開後もお客様に安心してお買い物を楽しんでいただけるよう「ご予約制」というスタイルにしたところ、こちらが逆に大成功でした。事前に来場人数も見え、食材の準備がしやすくなったことや、お客様を待つ暇な時間もなくなりました。出店する側にとってもお客様にとってもいい形が生み出せたと思っています。
“withコロナ”と言われる時代なので、これまでと全く同じにはいかないと感じています。対面できる“リアル”の大切さと、もう一つの柱として“オンライン”も活用も必要不可欠。まだまだ考える時期だと思います。
この状況に陥ったからこその気付きもあり、常に臨機応変に考えていく力を身に着けていきたいですね。
最後に、東北芸術工科大学で学ぶ在学生のみなさんへ、メッセージをお願いします。
山形という自然豊かな環境で遊びと学びをたくさん経験してください!
その中に将来に生かせそうな芽があるはずです。
今やりたいことが決まっていなくても焦る必要はないし、これから出会う環境の中で見つかることもあります。その時の直感を感じ取れるように、常に興味を持ったことは失敗してもいいからやってみる、失敗を繰り返して経験をしてみてください。たくさん経験して五感を育んでいってください。
■contact: watanabe.planninglabo@gmail.com
■Planning Laboratory facebook
■tsugi by PLANNING LABORATORY
■イベント情報
【定期開催】
・量り売りマルシェ(毎月二十四節気に合わせておまかせ便、マルシェを開催)
・tsugi at URBAN FLATS五橋(週に1~2日OPENするLOW WASTE LIFEを提案するプロジェクト)
・10/24(土)無印良品つながる市( 勾当台公園市民広場 227Cafe前広場)
・11/20(金)~11/23(月・祝)けごと市~霜月ことはじめ~(泉中央セルバ2Fセンターコート)主催:日々ノ道具 奥田金物
編集後記
「たくさんの”負”を”期待”や”希望”に変換できる人」
紹介者である伊藤玲子さん同様、彼女も生産デザイン学科の同級生でした。
学生時代の彼女を思い出すと、とてもよく笑い“さゆっている”姿が思い出されます。
卒業後、雑貨店に勤め始めた彼女に会うと「忙しい」と言いながらも、接客時は常に笑顔があって、その場がとても彼女に合っているように思っていたので辞めたことを聞いた時は本当に驚きました。
今回の取材でその時の気持ちや、今に至るまでの思いを聞いて彼女と改めて出会った気がします。
現在の彼女は、とても生き生きとしています。
どんなことでも続けてきたことを辞めるのは希望や期待と同時に葛藤や先の不安など、たくさんの「負」が付き纏いますが、彼女はその「負」を、自分を「俯」瞰し、自分の生き方に新たな体験を「付」け加えることに変換したのだなと感じました。
これからの彼女の活躍には期待しかないです!
※さゆる=彼女が飲み物をこぼすなど失敗する様を表す言葉
校友会事務局 カンノ(デザイン工学部生産デザイン学科 卒業生)
TUAD OB/G Batonについて
東北芸術工科大学は1992年に開学し、卒業生は1万人を超えました。
リレーインタビュー「TUAD OB/G Baton」(ティーユーエーディ・オービー・オージー・バトン/TUADは東北芸術工科大学の英語表記の略称)はアートやデザインを学んだ卒業生たちが歩んできた日々と、「今」を、インタビューと年表でご紹介していきます。